秋の風景「稲刈り 

 稲刈りの迫った時期に、実った稲穂の波が秋風に揺れる場面は絶景である。たとえば、米どころ越後平野を見下ろす弥彦山からの眺める一面の田んぼの光景は、壮観の一言に尽きる。まるで、金色の大きな波のようだ。いまでこそ機械化され、赤や黄色、あるいはオレンジ色といったカラフルなコンバインが稲刈りと脱穀を一気に片づけてしまう。だが、かつては、刈った稲を乾燥させてから、脱穀したものだ。稲刈りに使われる鎌はノコギリ鎌と呼ばれることもあるように、「歯」がギザギザになっていて、草刈鎌の「刃」とは異なる。これは繊維質の強い稲を根元から刈り取るために知恵だ。稲刈りのあとは、「稲架(はさ)」にかけたり、「にお」にして乾燥させる。その乾燥の方法は地方によって異なり、東北地方などでは「にお」と呼ばれる稲を積む方法が多く、新潟地方では稲架と呼ばれる高い木にかけて乾燥させている。刈り取られ、稲架にかけられた稲穂が、夕日を浴びて赤く染まるようすは、また美しい。