夏図鑑「蚊帳」

pl-201354156867.jpg昭和40年代頃まで、夏になると日本の多くの家庭では蚊帳を吊った。蚊帳の中には裾をスッとまくって入り込むが、子どもにとっては、その作法が難しかったりして、つい大きく開けて、大人から「まくりすぎだ」などと叱られた記憶をおもちの方もいるだろう。近頃、蚊帳は、めっきり使われなくなった。そもそも蚊帳を吊ろうにも、長押(なげし)のない部屋が少なくない。もっとも、住環境が格段に改善された昨今は、網戸があれば蚊帳を吊る必要もない。蚊帳は一般的に、麻や絽(ろ)を素材とし、萌黄色に染められ、赤い縁がつけられていた。この色合いには「魔除け」の意味もあり、また「雷除け」になるとも信じられていた。蚊取り線香のにおいとともに懐かしい風物詩のひとつだ。