夏図鑑「蛍(ほたる)」

277125.jpgほたるの放つ光は、まさに幻想的。そのはかなくも怪しげな光は、古代から人気があり、『日本書紀』や『万葉集』にも「ほたる」が登場しているという。全国各地に蛍沢や蛍川、蛍池など「蛍」のつく地名があり、お気づきだろうが、その多くが沢、川、池など「水」と関わりのある文字との組合せになっている。そうした土地では夏の夜ともなると、水辺の闇を「ほたるの光」が彩っていたことがうかがえる。日本には40種ほどのほたるがいるが、そのなかで発光するほたるは、ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタル、マドボタルなどの数種類。ホタルの発光物質はルシフェリンと呼ばれ、ルシフェラーゼという酵素とATPがはたらくことで発光する。表皮近くの発光層で発光が行なわれ、発光層の下には光を反射する反射層まであるそうだ。ほたるが光を放つことで、敵を威嚇するといわれている。なお、ほたるを観賞することを「ほたる狩り」ともいうが、これは「紅葉狩り」のように、ほたるが闇のなかで微かな光を放ちながら飛び舞う姿を愛でる行為のこと。