夏図鑑「茄子の馬」

3118900.jpg茄子に麻幹の足をつけて、「馬」のような姿にし、魂棚にお供えする……幼い頃、そんな親のようすをみたとき、子どもとしては「不思議」と思ったはずだ。茄子の馬は、あの世から、お盆に帰ってくるご先祖様の「乗り物」である。地方によっては、茄子のほかに、瓜が使われたり、キュウリが使われたりすることもある。また、呼び名にしても、地方によって、「茄子の牛」「瓜の牛」にかわることもある。さらに、「足の速いキュウリの馬に乗ってやってきて、あの世に帰るときは茄子の牛に乗って、ゆっくりと帰る」と考えられている地方もある。なぜ、茄子や瓜、あるいはキュウリなのかといえば、それぞれに夏が旬であり、この時期に多く採れる野菜のため手に入りやすく、また全国どこでも収穫できることから。また、食べ物が乏しい時代に、ご先祖様に精一杯のふるまいをしたいという気持ちから供えられたものだ。