夏図鑑「日傘」

GX001_72A.jpg平安絵巻を見ると、公家や高僧たちの高貴な人、出かけになるとき、輿などの後ろ側から、長い柄の傘がさしかけられ、日除けの役割をはたしているようすがうかがえる。この日除けの傘が「衣笠」で、いわば日傘のルーツ。歴史は古く、日本には、仏教伝来とともに「傘蓋(さんがい)」として伝わってきた記録が残っている。その後、江戸時代には子どもを陽射しから守るために使われ、さらに女性が使うようになったのは明治に入ってからの洋傘の普及。昭和30年代〜40年代の映画をみると、女性がモダンな日傘をさしているシーンが多いが、女性のアクセサリーの一部として登場している夏日や真夏日はあっても猛暑日の少なかった時代には、暑さ対策として日傘で充分だったのだろう。とはいえ、いまほど紫外線の害が知られていない時代でも、やはり女性にとって夏の日傘は、オシャレのポイントのひとつだった。