冬図鑑「年越しそば

年越しそば.jpgある調査によれば、日本人の6割近くが年越しそばを食べているという。食の文化圏でいえば「うどん」が主流の大阪でも、年越しそばを食べているそうで、「大晦日には年越しそば」は全国的な日本の食文化ということになりそうだ。歴史を紐解くと、江戸時代には年越しそばの風習があった。そばは麺類のなかでは切れやすいもので、大晦日に悪縁を切って新年を迎えようと縁起がかつがれていたという。また、金銀細工を業とする職人が、暮れの大掃除のとき、仕事場に散った金銀を集めるのに、そば粉の団子を使ったのが、年越しそばのルーツともいわれている。江戸時代の中期に脚気が江戸の街に流行り、「江戸わずらい」と呼ばれたことがあったときには「そばを食べると脚気にならない」と言われた。たしかに、そばはビタミンB1を豊富に含み、脚気のようなビタミンB1欠乏症の予防に効果があることは医学的にも正しい。そばにふくまれるルチンは血流をよくするといわれていて、やはり健康にいいことが知られている。医学や栄養学の知識がなかった江戸時代の庶民も、そばが身体にいいことを経験的に知っていたのだろう。一年の締めくくりに年越しそばを食べて、新しい年の無病息災を祈ったというわけだ。