冬図鑑「

鍋.jpg鍋を囲んで一家団欒とくれば、ほのぼの家族の夕食風景だが、最近では冬のホームパーティーでの鍋も人気メニューとなっている。たしかに、一人や二人、来客が増えたとしても具やだしを足せばまかなえるのも鍋ならではのものだ。寄せ鍋、石狩鍋、水炊き、すき焼き、もつ鍋、うどんすき、しゃぶしゃぶ、鱈ちり、ぼたん鍋、湯豆腐……と、鍋はバラエティに富んでいて、主婦のなかには「あの手この手で、一週間、夕食は鍋」という強者もいるとか。会社の忘年会でも鍋は人気だが、メンバーのなかに「鍋奉行」がいると、助かる半面、わずらわしいことも……。鍋を料理してくれているあいだはいいが、食べる順番や食べ方を指図されると面倒……というのを、誰しも一度や二度は経験しているのではないだろうか。さて、鍋の席で登場するのは奉行ばかりではない。灰汁をすくいとることに熱心な「灰汁(悪)代官」がいたり、鍋料理ができあがるのを待っているだけの女性、つまり「待ち(町)娘」がいたりする。こうなると、やはり「鍋は家にかぎる」ということになるかもしれない。また、鍋ほど郷土の味を反映した料理はない。郷土料理の代表的な味や素材が、ぎっしりと煮込まれて、そして味噌、醤油、出汁などが入り、食べるたびに懐かしい田舎の味が口の中に広がる。