冬図鑑「凧揚げ

凧揚げ.jpg映画「男はつらいよ」シリーズでは、東京は葛飾・柴又あたりのお正月の風景が登場し、荒川の土手で凧揚げをする子どもたちのようすがうかがえたりする。晴れ渡った空に、凧が揚がる姿や、子どもたちの元気な笑い声は、日本のお正月の風物詩であり、平和の象徴ともいえるだろう。もっとも、なかには、子どもたちよりも夢中になって凧揚げをしている大人もいて、たとえば、それが「寅さん」こと車寅次郎だったりする。凧は中国がルーツといわれており、当初は漁業や軍事で使われた。おそらくは情報伝達の手段として使われたはずだ。日本には9世紀頃までには伝わっていたとされ、平安時代中期の辞書として知られる『和名抄』に「凧」の記述がある。ただし、中国の凧が、鳥や獣あるいは虫、さらには竜や鳳凰のような伝説上の生き物に似せたかたちがあるのに対して、「和凧」と呼ばれる日本の凧の場合、竹の骨組みに和紙を張った凧で、長方形の角凧、六角形をした六角凧、奴(やっこ)が手を広げたような形をしている奴凧などが多い。地方によっても凧のかたちは異なり、日本各地に特色のある凧が冬空に舞っている。ちなみに、関西では「凧」のことを明治時代あたりまでは「イカ」と呼んでいたそうだ。