冬図鑑「手袋」
子どもの頃「手袋を反対に言うと何?」と言って、相手が「ろ・く・ぶ・て」と答えると、「1、2、3…」と数えながら6回ぶつ……という、大人からみれば「しょうもない」としかいえない遊びでも、昭和の子どもたちは嬉々として楽しんだもの。さて、その手袋だが、子どもにしても「おしゃれ心」はあったようで、たとえば「ミトン派」もいれば、「五本指派」もいて、絵柄にしても、キャラクターものだったり、雪の結晶が描かれたものだったり……と、ちょっとした個性が現われるアイテムだった。素材も毛糸だったり、中に綿が入った化学繊維製だったりしたが、晴れた日はともかく、雪の日や雨の日、あるいは雪遊びをすれば、結局、びしょ濡れになってしまうことにかわりはなかったが、教室のダルマストーブの囲いの網で乾かした人もいたはず。子ども用の手袋は、手を入れるとすぐにぽかぽかしてくるが、革製の手袋は、手を入れても、すぐに温かくなるものでもない。親が使っている革製の手袋をはめて、「全然あたたかくない」と思った子どももいたことだろう。だが、大人になると、革製の手袋のよさがわかる。風を通さないことでいえば、やはり革製がいい。冬の寒い日に自転車やバイクに乗るなら必需品だろう。いわさきちひろの作品に「赤い手袋の少女」という絵がある。タイトルどおり、赤い手袋が描かれていて、右手と左手の手袋が糸でつながっている。その糸は首の後ろをまわっている。そういえば、子ども用の手袋で、つながっている手袋があった。たしかに片方だけを失くすことはないが、もしも失くしてしまうと、右手も左手も寒いという思いをする羽目になったはずだ。
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