大井川鐵道は、大井川本線と井川線との２つの路線をもつ鉄道会社である。このうち、ＳＬ列車が走るのは、大井川本線の新金谷駅と千頭駅の区間となっている。もっとも大井川鐵道ではＳＬ列車だけを走らせているわけではなく、通勤・通学の足として、つまり、地元の方にとっての公共交通機関、ありていにいえば、「暮らしのための貴重な足」として運営されている。大井川鐵道がＳＬの動態保存を始めたのは１９７６年のこと。以来、ほぼ毎日、ＳＬ列車を運行している。ＳＬに牽引されるのは、鉄道ファンが「旧客」と呼ぶ旧型客車で、これがまた年配者にとっては懐かしい車両だ。ＳＬについていえば、子どもたちにおなじみの「きかんしゃトーマス」の姿をしたＳＬも登場し、大人気となっている。

ちなみに、井川線をＳＬが走ることは基本的にはないが、鉄道事業法および軌道法に準拠する鉄道としては日本で唯一のラック式鉄道（アプト式）区間となっている。「南アルプスあぷとライン」いう愛称をもち。大井川の上流部にあたる奥大井の渓谷を、ゆっくりと走る姿は、また一興だ。