鳴沢氷穴から800ｍほど離れたところにある富岳風穴は、総延長201ｍ、高さ8.7ｍに及ぶ横穴式の洞窟。入口に向かうための階段を数段降りるだけで、ひんやりした空気に包まれる。洞窟内の気温が年間平均で約３℃に保たれていることを利用して、かつては、蚕の卵の貯蔵に使われていたという、いわば「天然の冷蔵庫」。洞窟内には、いまも昭和30年頃まで実際に使われていた繭（まゆ）や種子の貯蔵庫が残されていて、「繭玉が成長しないように、また良質の種子を保存し、

芽吹きを良くするため冷蔵状態で貯蔵していました」という説明書きがある。苔の一種で、正式には珪酸華（けいさんか）というヒカリゴケの群生地としても知られており、ヒカリゴケの青白い光と、それを周囲の岩が銀色に反射させるようすは幻想的な光景。さらに、洞穴の内部では音がほとんど反響しない世界となっているが、これは壁の玄武岩質が音を吸収する性質をもっているためだ。所要15分の見学コースでは、夏でも溶けない氷柱や、珍しい溶岩棚、縄状溶岩などを目にすることができる。