春図鑑「春の七草

芹、薺、御形、繁縷、仏の座、菘、蘿蔔、あなたは、いくつ読めただろうか? ヒントは「春の七草」。答えは「芹(せり)」で白根草(しろねぐさ)という別名をもつ、湿地やあぜ道に生える草で、茎や根はおひたしにして食べられる。「薺(なずな)」は花の下についている実のかたちが三味線の撥に似ていることからぺんぺん草とも呼ばれる。「御形(ごきょう)」は母子草(ははこぐさ)とも呼ばれるキク科の植物。「繁縷(はこべら)」は民間療法では薬草としても使われる。「仏の座(ほとけのざ)」は田んぼやあぜ道に生えるキク科の植物で、小鬼田平子(こおにたびらこ)とも呼ばれる。「菘(すずな)」は蕪(かぶ)。「蘿蔔(すずしろ)」は大根。言われてみれば、「そうか」というものもあるだろうが、すべて漢字にすると、なかなか難しいものだ。春の七草は食べることができる草を集めたもので、それぞれをこまかく刻んで正月七日の朝、「七草粥」としていただく。一説にはお正月料理で疲れた胃腸を休めるためのものといわれているが、そもそも質素な食事しか食べられなかった昔のことを思えば、「無病息災を祈って食べるもの」と考えたほうがよさそうだ。「秋の七草」がすべて鑑賞用の植物であるのに対して、「春の七草」はすべて食べられるもの。「収穫の秋」に対して、「新年を迎えた安堵感」を食文化に反映させたようにも思える。
 

 

春便り 

 

 
 
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