春図鑑「春雷

雷といえば夏の入道雲(積乱雲)や夕立をイメージしがちだが、春に寒冷前線が通過するときにも積乱雲が発達して雷が発生する。ときとして雹(ひょう )が降ることもあり、農村地帯では作物に被害が出ることも少なくない。春雷は夏の雷ほど大きなものではないが、古代の人たちにとっては、やはり恐ろしいものだったようで、宮中には「警護のための雷の陣」が設けられたと「延喜式」は伝えている。立春のあとの雷を「初雷」と呼ぶことがあるほか、二十四節季の「啓蟄(けいちつ)」の時期と重なる時期の雷は「虫出しの雷」などと呼ばれたりする。冬眠していた虫たちが雷の音に驚いて地上に現われると考えられたのだろう。雪の降る地方では、冬のあいだ、空から降ってくるのは雪ばかりだったが、春雷とともに雨に変わることから「春を呼ぶ雷」と呼ばれることもある。子どもにとっては、春だろうと夏だろうと雷は怖いものと決まっていて、ようやく暖かくなり、外で遊べると思っていた矢先に春雷が響くと、「今度は雷かぁ…」と、残念がったはずだ。 
 

 

春便り 

 

 
 
リンクボタン
Copyright ディスカバーニッポン. All Rights Reserved.