春図鑑「新緑

ひところ「森林浴」がブームになったが、たしかに科学的にも木々が発散するフィトンチットがヒトの精神をリラックスさせる効果があることがわかっている。しかし、日本人は科学的に解明される以前、それも平安時代から、新緑の香りが心の平穏が得られることを知っていたという説もある。現代でいえば森林浴は、都会の喧騒を抜け出し、鳥たちの声を聞き、きれいな空気を吸い、また、樹木の枝葉のゆらぎを見て、心が安らかになる空間で時をすごすことで、生気を養える。もちろん緑色が目にいいことはいうまでもなく、人間が外からの情報の90%を視覚から得ているという学説からすれば、「よけいなものをシャットダウンして、ただ、自然の緑を目にする」ことで、脳波が落ち着き、それに伴って心拍数も落ち着くことは明らかだ。と、医学的な話はこのくらいにして、要するにヒトが自然の中に身を置くことは間違いなく健康にいい。しかも、新緑といえば、まさに樹木の息吹が感じられるもの。「目には青葉 山ほととぎす 初がつを」ではないが、新緑は無言うちに、人々の心の中に春の活力を与えてくれるものといえるかもしれない。
 

 

春便り 

 

 
 
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