春図鑑「春一番

2月の中旬から3月の上旬にかけて吹く強い南風が「春一番」。その名のとおりに春を告げる風で天気予報でもおなじみだろう。もともとは気象用語ではなく、九州の北方に位置する壱岐島(長崎県)や能登(石川県)の漁師たちが使っていた言葉だ。漁師たちにとって風のようすは命にもかかわる貴重な情報で、当然、風向きや強さの変化には敏感にならざるを得ない。科学的には日本海低気圧によるものだが、漁師たちは経験則から、春を呼ぶ強風と知っていたのだろう。陸上では春一番が吹くと、植物の芽が出始めるが、海の男たちからすれば、それどころではなかったはずだ。漁師たちが使っていた「春一番」という言葉が天気予報で使われ出したのは戦後のことで、北海道と東北、そして沖縄を除く日本各地で春一番は吹く。中年男性のなかには「春一番」と聞くと、春の強い風よりも先に、昭和のアイドルグループであるキャンディーズのヒット曲を思い出す人がいるかもしれない。1976年(昭和51年)3月1日に発売されたキャンディーズ9枚目のシングルでシングル売上は累計49万枚で2度目となる「NHK紅白歌合戦」に出場を果たした。まさに春一番が吹く時期に発売されていたわけだ。
 

 

春便り 

 

 
 
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