秋の風景「夕日 

 「秋の夕日に照る山もみじ 濃いも薄いも數(かず)ある中に、、、」。童謡の「紅葉(もみじ)」でも歌われているように、秋の夕日は印象的。10月に入ると東京の日の入りは時刻は17時過ぎ頃になり、ちょうど帰宅時間。俳句歳時記では夕焼けは夏の季語だが、秋の季節は澄んだ空で赤みを増した美しい夕日が見られる。それは夏の空は大気中の水蒸気が多すぎて光を過剰に散乱させてしまうから、白っぽく霞がかかったようになって赤が引き立たないが、秋は散乱光を反射させて広範囲に赤く展開するに丁度良い水蒸気を含み、夏場のように遮る効果は弱まり、空一面真っ赤に照り返してくれる。そのため、秋はスッキリした夕日が見え、『枕草子』のなかで、清少納言は「秋は夕暮れ」といっているほど。日本人とって秋の夕日は、平安の世から趣のあるものだったといえるだろう。