秋の風景「案山子(かかし) 

 

 稲が実るこの季節には、鳥などの被害から農作物を守るために田園にたたずむのが案山子。ワラや竹細工で人のように見せかけて作った人形ですが、なぜか顔は「へのへのもへじ」で、田畑にたった独り、一本足で立っている。もちろん、田畑の農作物を鳥や獣から守る役目を果たしていて、さらに「作物を守る田の神の姿」といわれることもあるが、傾いた案山子があったりすると、切ない気持ちになったりもする。それはともかく、案山子を「かかし」と読むには、いささか難しく思える。だが、それもそのはずで、「案山子」は「日中合作とでも呼ぶべき当て字」である。「かかし」はもともと、髪や魚の頭などを焼いて、あえて異臭を放つものをつくり、それを串などにさして田んぼや畑に立てることによって、農作物を鳥や獣などの野生動物から守った。つまり「臭いをかがす」ことから「臭し(かがし)」と名づけられたもの。一方の「案山子」は中国の言葉で、「案山」は山の中の平地のことを表わし、「子」は人形のことを表わす。このふたつが合体して、田畑で鳥獣を追い払う人形が「案山子」となったわけだ。